捜査の方向性が変わってきた
ブラックリストを作成していたのが国家情報院だ。
2017年5月に発足した文在寅(ムン・ジェイン)政権は、従来の積み重なった弊害を明らかにして責任を追及するという「積弊清算」を強力に進めている。
特に、保守政権が行なった国家情報院による世論操作事件(ブラックリスト問題を含む)に焦点を当て、検察は当時の関係者を次々に取り調べて、主要な人物たちを逮捕している。こうした流れの中で、イ・ジュンギがブラックリストに載った過程や、彼の兵役延期が認められなかった背景が明らかになると思われたが、ここにきて捜査の流れが変わってきた。
文在寅政権の意向を受けた検察が強制的な捜査を進めた結果、逮捕者が後に釈放されたり、取り調べを受けた人が自殺したりする事態になってきた。
それを受けて、検事総長が12月5日になって、それまでの捜査を今後は見直す意向を明らかにした。
「あまりに捜査がやりすぎだ」
そういう声が起こり、政権寄りの検察が批判されるようになった。
こうなると、必然的にブラックリスト問題の捜査も変わらざるをえない。イ・ジュンギに関していうと、ブラックリストに載った経緯が明らかにならないことも予想される。「真実は神のみぞ知る」になってしまうのだろうか……。
いずれにしても、イ・ジュンギが芸能活動の妨害を受けたことは確かだが、それに負けずに、彼はすばらしい作品に主演して評価を高めてきた。
イ・ジュンギはやはり、本当の実力を備えた俳優なのである。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
康 熙奉(カン ヒボン)
1954年東京生まれ。在日韓国人二世。韓国の歴史・文化・社会や、日韓交流の歴史を描いた著作が多い。主な著書は『知れば知るほど面白い朝鮮王朝の歴史と人物』『宿命の日韓二千年史』『韓流スターと兵役』など。
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