7月29日からシネマート新宿とシネマート心斎橋で公開されている映画『ワン・デイ悲しみが消えるまで』(以下、『ワン・デイ』と表記)。この映画について主演のキム・ナムギルは「観客のみなさんが、温かさを感じて癒されたりしながら、勇気を得られる作品になるといいと思います」と語っている。
俳優にとって対極のキャラクター
映画は誰のものか。
制作の総指揮をとるプロデューサーのものか。
作品の出来に全責任を負う監督のものなのか。
いや、『ワン・デイ』に関して言うと、この映画はキム・ナムギルのものだった。
そう思わせる根拠は何か。それは、『ワン・デイ』で見せた彼の演技が、他の俳優のイメージが入り込む余地がないほど完全だったからだ。
映画の中でキム・ナムギルが演じたガンスは、最初は、タガがゆるんだ無気力な男として登場する。
妻を失って憔悴するガンス。しかし、妻を目の前で送ることに耐えられず、葬儀に欠席して義弟に殴られる。
会社でも、保険会社の調査官を担当しながら、服装は乱れ、夜には大酒をくらっている。どう考えても、ダメな男だ。
こういう役柄は難しい。俳優にとっては対極に位置するキャラクター設定だからだ。(ページ2に続く)