朝鮮王朝は1392年に建国されてから518年間続きましたが、1910年に滅亡しています。それは、朝鮮半島が日本の植民地になったからです。そこに至るまでには、どういう経緯があったのでしょうか。3回にわたって取り上げていきます。
平和的な善隣関係
私(康熙奉〔カン・ヒボン〕)もよく記憶しているのですが、中学や高校の歴史の授業というのは、3学期の後半にようやく幕末あたりにたどりつき、最後に明治時代をサラッと触れて終わり、という経過がほとんどのようです。つまり、重要な近現代史がスッポリと抜け落ちてしまいがちなのです。
講演会では「なぜ韓国は日本の植民地になったのですか」という質問をいただきます。知りたいと思っている方が多いのだなあ、と実感するのですが、ここで改めて説明してみることにします。
かなり重いテーマですので、簡潔に語るというわけにもいきません。やはり、江戸時代の徳川幕府と朝鮮王朝の関係から述べていくのが賢明でしょう。
徳川幕府は鎖国体制を維持したとよく言われますが、朝鮮王朝とは唯一の外交関係を結んでいました。朝鮮王朝からは、正式な外交使節となる朝鮮通信使が合計で12回来日しています。日本と朝鮮半島の交流史の中で、江戸時代ほど両国が友好的だった時期は他にありません。まさに、平和的な善隣関係を築いていたのです。
ただし、19世紀に入ってから、少し状況が変わってきます。莫大な招聘費用がかかるということが理由となって、朝鮮通信使の来日が途絶えがちになりました。(ページ2に続く)