極上のおもしろさ
誰もが天から定められた寿命を授かって生まれてきます。それを“定命(じょうみょう)”というのだそうです。その定命を全うし、天に帰る日がいつなのかは、誰にもわかりません。
残された人は容易にそれを認めることはできませんが、悲しみきったあとには、先に旅立った人が残してくれた大きな愛に気付きます。そして、それを糧に私たちはまた力を出して生きていかなくてはならないのです。
この『帰ってきて、おじさん』は温かく感動的な場面にあふれ、号泣必至の作品なのですが、思わず大爆笑してしまうシーンも随所にあり、視聴者を飽きさせません。
細かい伏線に次ぐ伏線が敷かれていて、最終話の最後のシーンまで、あっと驚くしかけが満載です。
登場人物の名前や小道具など、ニクイ演出に韓国ドラマの真髄を見た気がしました。
OSTにも実力派歌手が多く参加しており、ドラマに花を添えています。特にボーカルグループのノウルが歌う素晴らしいハーモニーが切ない感情を最高潮まで導いて、感動の涙を流さずにはいられません。
また、各回の最後に流れる1分程度のちょっと笑えるエピローグもドラマに添えられる極上のスパイスになっています。
最後に、面白いエピソードをご紹介しましょう。
9話のエピローグでは、ピの大ヒット曲「太陽を避ける方法」のワンフレーズが流れます。この選曲がドラマ放映時に話題になりました。
それは、なぜでしょうか。
前述しましたが、同時間帯の裏番組で高視聴率を誇っていたドラマがありましたね。そのドラマのタイトルは『太陽の末裔』。ヒロインはピと『フルハウス』で共演したソン・ヘギョでした。
本当に“太陽”を避けたかったのかどうか定かではありませんが、それが制作陣の意図したジョークだとしたら、この作品がどれほどおもしろいのか、おわかりいただけると思います。
韓国ドラマの底力が見せる極上のおもしろさと感動をぜひお楽しみください。
文=朋 道佳(とも みちか)