『テバク』の影の主人公と呼ばれた李麟佐(イ・インジャ)は何者?
- 2016/6/24
- 『テバク』
- チョン・グァンリョル, テバク
「大元帥」と自称した男
英祖の兄の景宗は、父親の粛宗が亡くなった1720年に即位したが、当時は景宗を支持する少論派と、英祖を支持する老論派の主導権争いが激しかった。
景宗が即位からわずか4年で世を去って異母弟の英祖が即位したのだが、少論派は「英祖が景宗を毒殺した」と猛反発した。そうした少論派と結託する形で1728年に大々的な反乱を起こしたのが李麟佐だった。
彼はもともと清州(チョンジュ/都から東南側に130キロ離れた都市)に住んでいたが、1724年3月に郎党を率いて清州城を攻めて占領した。
勝ち誇った李麟佐は自らを「大元帥」と称した。彼は「景宗のための復讐だ」という大義名分を掲げ、景宗の位牌をあえて用意して、それを拝み続けた。「義は我らにある」という姿勢を見せて、同志を募ったのである。
兵力を増やした李麟佐の軍は、北上を開始して都をめざした。賛同する者も多かったが、李麟佐に「大元帥」と称するほどの統率力があったのかどうか。
彼は景宗の名を借りて、自らの野心をふくらませただけではなかったのか。
大義名分を掲げて北上して都に迫ったものの、最後は官軍に大敗して、李麟佐は生け捕りにされたあとに処刑された。(ページ4に続く)