静かな環境での個人練習は無理
軍楽隊員が練習で一番苦労するのは、「音」の問題である。
というのは、個人用の練習室があるわけではなく、団体で一緒に同じ部屋で楽器の練習に励むことになる。たとえ個人の練習であろうと、他人の楽器の音が嫌でもガンガン響いてくる。
特に、フルートなど繊細な音を出す楽器の担当者は、全員同じ部屋での練習に苦労するようだ。
また、軍楽隊員もれっきとした軍人である以上、階級による絶対服従が鉄則である。
兵役期間の間、兵士は、二等兵 → 一等兵 → 上等兵 → 兵長と昇級していくが二等兵と一等兵の間は、軍楽隊員といえども雑用が多くて大変だ。
銃と同様に楽器もきちんと管理しなければならず、上等兵や兵長に命じられたら楽器をきれいに磨く作業もやらなければならない。このあたりは、軍楽隊員ならではの苦労と言えるだろう。
また、二等兵と一等兵の間は、夜の休憩時間にも少しは個人練習を重ねていかなければならない。それをやらないと、「まだまだヘタなのに、なんで練習をしないんだ」と上官から怒られてしまう。結果的に、休憩時間を削らなければならないのだ。
上等兵になると、ようやく休憩時間の練習から解放される。それ以外にも、部下が雑用をすべて引き受けてくれるので、グッと楽になる。
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