キム・スンウとの友情
撮影が進むほどに勘を取り戻していったが、「演技中の視線をどこに置くか」という問題では苦労が多かった。
ブランクが長かったせいか、どうしても視線がぎこちなくなってしまう。さらには、撮影直前に書き直されるシナリオにも苦しめられた。
けれど、苦労が多ければ多いほど、気持ちが充実してやり甲斐が大きくなるのを感じた。やはり、撮影現場はペ・ヨンジュンが「今まさに生きていること」を痛感させてくれるところだった。
「先輩や同僚に本当に助けられました」
ペ・ヨンジュンは心からそう思った。特に、共演のキム・スンウには精神的に支えてもらった。この先輩俳優の励ましが、本当に大きな力となった。
キム・スンウの役は、ホテルの総支配人ハン・テジュン。ホテルの買収を狙うシン・ドンヒョクとことごとく対立する立場であり、恋のライバルでもある。ドラマの中で徹底的に対立した二人だが、撮影現場を離れれば人間的な信頼関係があった。それがまた『ホテリアー』の成功の原動力になった。
キム・スンウは、ペ・ヨンジュンについてこう語る。
「彼は、想像よりもずっと自由で男らしいですね。初めて会う前は『いつも格好よく着こなしてオシャレな言葉を使う人だ』と思っていたのですが、気軽に冗談を言うような気さくな性格なので驚きました。以来、二人で酒を飲むようになって親しくなりました。そんな中で、私はペ・ヨンジュンが男らしい人間であると実感しました。義理堅いところも大いにありますね」
共演者からこれほど信頼されれば、ペ・ヨンジュンもさぞかし気分よく撮影に臨めただろう。出演陣のチームワークが良く、『ホテリアー』は内容的にもすばらしい出来栄えになった。
ペ・ヨンジュンも復帰作を見事に成功させて、さらなる成長を遂げていった。
(次回に続く)
文=康 熙奉(カン ヒボン)