経済危機が自立心を促す
1997年に韓国は「国の金庫が空になる」という危機に直面し、朝鮮戦争に次ぐ「第二の国難」と呼ばれた。
「国が破産するのではないか」
そう心配した人たちが、手持ちの貴金属を国に差し出す、という涙ぐましいことにもなった。絶対につぶれないと言われた財閥企業が倒産し、街には失業者があふれた。
11歳のユンホにとって、そんな危機的な社会はどのように映ったのか。「国に頼ってはいけない。1人でたくましく生きていかなければ」という思いを強くしたのではないだろうか。
いわば、子供にも「自立心を強く持たなければならない」と悟らせたのが、1997年の「経済危機」だった。
一方、ユンホが生まれ育った全羅(チョルラ)南道の道都・光州(クァンジュ)市は、広い平野に囲まれていて「食の都」と称される。
食べることに恵まれていた土地柄だけに、穏やかな道民性で知られるのだが、1980年には軍事政権に反旗をひるがえした「光州事件」で韓国現代史に重要な足跡を残している。
そのときは数多くの市民が軍によって虐殺されたが、民主化を先導した気骨は今も光州市民の誇りとするところである。
その精神は間違いなくユンホにも受け継がれている。(ページ3に続く)