『愛の群像』に主演
どんな場合にも、ペ・ヨンジュンは精一杯の誠意を見せた。このときの降番劇についても、きちんと謝罪している。
「本当に申し訳ありません。私の責任です」
きちんと謝罪をすれば、それを容認して関係を修復する……そうした寛容さもまた韓国社会の特徴の一つだ。
事実、ペ・ヨンジュンはその3年後にKBSの『冬のソナタ』に出演している。もし、ペ・ヨンジュンとKBSの関係がこじれたままだったら、アジアを熱狂に包んだ傑作ドラマが生まれていなかったかもしれない。
果たして、そんなことが想像できるだろうか。
結局、『裸足の青春』の次回作をめぐって紆余曲折があったが、ペ・ヨンジュンが出演したのはMBCの『愛の群像』だった。KBSで育てられた彼は、初めて他局のドラマで心機一転をはかることになった。
このドラマでペ・ヨンジュンは、魚市場でカニの仲買人として働く一方で、苦学しながら大学に通う学生ジェホを演じた。
ペ・ヨンジュンにとって、演技の多様性に挑む重要な作品となったが、視聴率のうえでは伸び悩み、かならずしも成功とは言えなかった。
けれど、何をもって「成功」「不成功」と判断するかは、厳密には言えない問題だ。それよりも、この『愛の群像』が画期的だったのは、「ウジョンサ」が誕生したことだった。これは、インターネットを中心に、「愛の群像」を愛するファンが集まったものだった。一つのドラマから、熱狂的なファンのグループが大規模に生まれたことは、それまでの韓国にはなかった現象だった。
この「ウジョンサ」は単にドラマを支援しただけでなく、会員が「ジェホのように苦学している若者を助けよう」と決議して具体的にボランティア活動も行なった。また、視聴率の問題で悩み苦しむペ・ヨンジュンを励まし、新たな勇気を与えてくれた。
俳優冥利に尽きる、とはこういうことなのだろう。ペ・ヨンジュンはファンの温かい声援を受けて、俳優であることの幸せを心から感じた。
文=康 熙奉(カン ヒボン)