撮影中に溺れる
ときは真冬だった。相手役の女優が川に靴を投げ入れたら、それを取りにいくという設定だった。
確かに真冬の川では危険なシーンなのだが、ペ・ヨンジュンは果敢に挑戦しようとした。しかも、彼は水泳に自信があった。
けれど、女優が投げた靴が意外と遠くまで飛んでしまったことが誤算だった。ペ・ヨンジュンはすぐに川に飛び込んで取りに行ったが、ジーパンをはいていたこともあって次第に身動きができなくなり、不覚にも溺れてしまった。けれど、カメラは回っている。必死に演技もしなくてはならない。さすがのタフガイも水を大量に飲んで苦しかった。
ようやく助け出されたとき、ペ・ヨンジュンは震えながら言った。
「本当に死ぬところでした」
それを聞いたチョン・ギサンは「確かに、お前は本当に死ぬ思いだったことだろう」と軽く言葉を返してくるだけだった。
監督からすれば、おかげで迫真のシーンを撮れたという思いだったのかも。ペ・ヨンジュンにしてみれば散々な出来事だったが、同時に現場の厳しさも思い知らされた。
一方、『愛の挨拶』は放送を重ねる度に評判となり、ペ・ヨンジュンの経歴を知りたいという問い合わせがKBSに殺到するようになった。また、ドラマのロケがひんぱんに行なわれるソウルの弘益(ホンイク)大学の周辺には、ペ・ヨンジュンを一目見ようと大勢のファンが集まり、撮影時はいつも人だかりができた。
「すごく震えます。僕のことを知りたいと思う人がいて、ファンレターまでたくさんいただくのですから……」
ペ・ヨンジュンはそう言って感激を新たにした。
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