親の手に負えない子供
ペ・ヨンジュンは1972年8月29日にソウルの中区で生まれた。家は東大門(トンデムン)市場に近い龍頭(ヨンドゥ)洞にあった。そこは下町の雰囲気を残す賑やかな地域だった。
1972年というと、日本では第二次ベビーブームの真っ只中だった。つまり、戦後すぐのベビーブームに生まれた人たちが20代に成長し、結婚ラッシュとなって多くの子供が生まれたのだ。
それは韓国もまったく同じで、1945年に植民地支配から解放されてからベビーブームとなり、その子供たちが成人して1970年代前半に第二のベビーブームが起こった。つまり、ペ・ヨンジュンの世代は人口が多く、学校は常に生徒であふれかえっていた。それだけ競争にさらされ続けたのだ。
しかし、ペ・ヨンジュンは人と争うことを好まず、1人で静かに遊んでいるのが好きな子供だった。
とはいえ、幼い頃からペ・ヨンジュンは親の手に負えなかった。それは彼がきかん坊だったからではない。
むしろ、素直で親の言うことをよく聞いた。それでは、なぜ親を困らせたのか。実は、度がすぎるほど好奇心が旺盛だったからだ。
とにかく、ペ・ヨンジュンはなんにでも「なぜ」という疑問を持った。
なぜ、そうなっているのか。
なぜ、こうならないのか。
たとえば、男の子が好きな組み立て式のおもちゃ(日本でいえばマジンガーZのキャラクターのようなもの)で遊んでいると、それがどんな原理で組み立てられているのかが気になって仕方がなかった。
そうなると、どうしても分解したくなる。ペ・ヨンジュンは屋根裏部屋にこもり、ドライバーとペンチを持って早速解体作業に入るのだった。
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