テレビ局と子孫たちの攻防
確かに、朝鮮王朝時代に領議政まで務めたので、子孫は申叔舟のことを大変誇りに思っていただろう。
しかし、『王女の男』の中では仲間を裏切る日和見主義者だった。この描き方に子孫たちが激怒した。放送したKBSに猛烈な抗議をしたのである。
抗議を受けたプロデューサーはこう語っている。
「もともと、時代劇である人物を描くときには慎重を期さなければなりません。特に、実在した歴史的な人物の歩みを歪めてはいけないのです。子孫が大勢いるので、名誉棄損になるかもしれません。現に、『王女の男』を制作したときに、子孫たちから抗議がありました。私たちと真偽をめぐって大変な攻防となったのです」
韓国には感情的な人が多いから、プロデューサーも大きな声で怒鳴られて、さぞ困惑したことだろう。
しかし、抗議は想定内なのである。そういう事例が過去にも多かったからだ。それだけに、テレビ局側も負けていない。
KBSのプロデューサーがさらに続けてこう言う。
「歴史の史料にこう書いてある、と私たちは証拠を出しました。つまり、古い歴史解説書の真偽まで判別しなければならなかったのです。子孫たちは『その歴史書で我が先祖の申叔舟を間違って描いたのが影響している。なぜそんなものを参考にしているのか』とさらに執拗に抗議してきました。私たちも正式な歴史書である『朝鮮王朝実録』まで提示しながら、主張を曲げませんでした。本当に子孫を説得するのが大変でした」(ページ3に続く)