あの傑作の場合はどうだったのか
韓国ドラマがいかに放送直前まで撮影をしているか。
「冬のソナタ」を例にあげてみよう。
あのドラマで有名なクライマックス。チュンサンとユジンが劇的に再会して、夕日をバックに抱き合う場面がある。
このシーンが撮影されたのは放送最終日の前日。撮影場所がソウルからはるかに遠い外島(ウェド)という小さな島だったので、俳優もスタッフも帰りの飛行機を気にしながらの撮影だった。
果たして、集中できたかどうか。
しかし、撮影はこれで終わりではなかった。放送最終日の夕方にも、ソウルでまだ撮りおえていないシーンの撮影をしていた。
その日の夜にはKBSで「ドラマの成功を祝うパーティー」が開かれたが、ユン・ソクホ監督にのんびりしている余裕はなかった。まだ編集作業が残っていたからである。それでも、午後10時の放送開始に間に合ってホッとしたことだろう。
こんな綱渡りがいつも行なわれている。それでも、あれほどの傑作になるのだ。土壇場で底力を発揮するのも、いかにも韓国らしい。
ところで、最近は韓国でも少しずつ事前制作のドラマが出てきている。いま爆発的な人気を獲得している『太陽の末裔』もその1つ。中国と同時放送をするために、あえて事前制作に踏み切ったが、こういう特別な理由がないかぎり、韓国ではまだまだ「生放送型」の撮影が圧倒的に多い。
(文=康 熙奉〔カン ヒボン〕)