ターニングポイントになる作品
この2年間、チャン・グンソクは大学院に通いながら、様々に持ち込まれるシナリオを見ていたはずだ。そのシナリオはラブコメが多かったのではないだろうか。これまでの彼の歩みを考えれば、それも当然のことだ。
しかし、もはやチャン・グンソク自身が、過去の成功体験にとらわれず、新しい自分を模索したいと考えていた。
俳優にかぎらずどんな分野でも、その成長を阻害するのが過去の成功体験であることをチャン・グンソクはよく知っていた。だからこそ、彼は『テバク』の制作発表会で「今までのものを捨てて」と言ったのだ。
なにも「捨てる」ことはないのかもしれない。立派な実績はそれとして残しておけばいい。しかし、チャン・グンソクはそれでは中途半端になると考えた。思い切って捨てなければ新しいものも見つけられないと実感したのだ。それほど、新しくチャレンジしてみたいという気持ちが強かったのである。
『テバク』の初放送を直前に控えて、彼は次のようなメッセージを発している。
「30歳になった僕の人生のターニングポイントになるような重要な作品とキャラクターなので、いつもより緊張するし、ときめく思いで初放送を待っています」
そう語ったあとで、チャン・グンソクは「新しいイメージを初公開することができてうれしい」とも付け加えている。
第1話の冒頭のシーンを見ると、確かにチャン・グンソクが言うような「新しいイメージ」の片鱗があった。ベテラン俳優のチョン・グァンリョルと対峙したチャン・グンソクは、力強い口調と引き締まった表情で「今までとまったく違う空気」を演出してみせた。果たして、多くの視聴者にはどのように受け取られたのか。
「新しいイメージ」には危険な香りがともなう。イメージ・チェンジに失敗した俳優の例は枚挙にいとまがない。
しかし、チャン・グンソクは後戻りしない。自分が望む30代になるために、過去を捨てて『テバク』でチャレンジする。
(文=康 熙奉〔カン ヒボン〕)