いわゆる韓国人の3大姓氏である金(キム)、李(イ)、朴(パク)は、全国民の50%近くを占めている。中でも金氏が21%以上で断然多い。世界のどの国でも特定の姓氏が人口の20%を越えることがないだろうから、韓国があまりに特殊だといえる。一つの姓氏がそんなに多かったら、それぞれの家門をどう見分けるのか。何を見て、その人が名家の出身だとわかるのだろうか。
本貫はその姓氏が誕生した土地
実は、同じ姓氏といっても、みんな同じではない。なぜなら、韓国人の姓氏には本貫(ポングァン)というものが隠されているからだ。
普通、韓国人は自分の姓氏を詳しく言うときにはこの本貫をつけて、「私は○○金氏です「僕は○○李氏です」という。この○○に本貫が入るのだが、これはその姓氏が誕生、または定着した地名のことだ。
つまり、同じ金氏といってもその一族の始祖が家門を立てた地域によって異なる。金氏だけでも金海(キメ)、慶州(キョンジュ)、江陵(カンヌン)、光州(クァンジュ)、安東(アンドン)など数えきれないほどの本貫がある。
実務的な調査によると、韓国人の姓氏は290あまりだが、本貫は4300余もあるという。
正確には、4300余の姓氏が存在するということと同じなのである。
また、同じ姓氏と本貫を持っていても、派が違う場合がある。ここでいう派は、同じ本貫の中でも系統を分けるために付けるもので、子孫たちが自分たちの先祖を誇るためにその爵位や官職を基に作るのである。
朝鮮王朝の王家である全州(チョンジュ)李氏では、518年間の統治時代に多くの王子が生まれたが、皆が王になったわけではない。そこで、その王子たちの子孫が後に自分たちの先祖の爵位を元に派を作った。
今も全州李氏たちは同じ本貫の子孫が多いため、本貫が一緒でもまずどの派なのかを尋ねる。派が同じということは、その分だけ血縁関係が近いことを表しており、同じルーツをもった親戚同士になる。
以上のことを整理すると、韓国人の出身は、姓氏と本貫と派の三つの条件で分けられる。姓氏が同じでも本貫が違えば同族ではない。
必ず姓氏と本貫が一緒な人だけが同族であり、さらに派も同じだったら家族のように近い血族なのだ。
韓国ではこれらの条件は大変厳しく守られていて、実際、2005年の法律の改正前までは、同姓同本(同じ姓氏で同じ本貫)同士の男女は法的に結婚できなかった。
韓国ではなぜこのように複雑な姓氏を受け継いでいるのか。それは、韓国人にとって姓氏は家族の単位ではなく血統の単位だからだ。
多くの国では姓氏は集団の名称であり、外部から新しい人が入ってくれば、それまでの姓氏を捨てて、新しく入る家族の姓氏に変える。
しかし、韓国では父系を中心として続く血統の定義が姓氏であり、結婚しても女性の姓氏は変わらない。
日本を初め多くの文化圏では、結婚をすると女性の姓氏が夫の姓氏と同じになるが、韓国ではまったく変わらない。それは、結婚したとしても、その女性の血統が変わるわけではないからだ。
つまり、その人の血統を現すために複雑な姓氏制度を守っているのだ。
先祖を尊重し、家門を重んじ、孝を最高の徳とする韓国人にとって、血統というのは何よりも大切な価値を持っている。
それだけに、韓国では今でも誰もが自分の本貫と派を知っており、同じ姓氏に会うと本貫がどこなのか、派は何なのかを聞く。
それによって、相手がどんな血統を持っているのか……すなわち、どんな家柄の出身なのかがわかるのである。
文=「ロコレ」編集部