時間をかけて映画初主演作を模索していたペ・ヨンジュン。彼の元にはCM契約の話が次々と持ち込まれた。契約料も破格で、出演作がないままに彼はイメージを売ることで「CM長者」となっていた。
本当につらかった
どんなにCM契約で注目を浴びても、ペ・ヨンジュンとしては本業にこだわりたかった。俳優として納得する映画に主演することが、ペ・ヨンジュンにとっての矜持だった。
その熱意に周囲も折れ、退廃的な両班(ヤンバン)の役への挑戦を支援してくれることになった。
時代劇の映画を準備していたイ・ジェヨン監督からも「一度カメラテストをしてみよう」と声がかかった。
ペ・ヨンジュンは、眼鏡をはずし、髭を付け、韓服を着た。さらに、髷を結ったカツラをかぶるつもりだった。けれど、イ・ジェヨン監督がカツラを許さなかった。自分の髪で髷を結わないと真実味に欠ける、というわけである。
ペ・ヨンジュンもその件は納得したのだが、実際に髷を結うとなると、想像以上の痛みに苦しめられた。
「息が止まるほど痛かった。こんなことをいつもしなければいけないなんて……」
弱音を吐かないペ・ヨンジュンが嘆くほどだから、本当につらかったのだろう。それほど苦労して両班に扮してみると……。
やはり、実際に成りきってみないとわからないものだ。ほとんどの人が「ペ・ヨンジュンが両班に扮しても似合うわけがない」と思っていたのに、カメラテストの評判は上々だった。
気を良くしたペ・ヨンジュンだったが、それでも頭の痛みには苦しめられるばかりだった。撮影中にいつもこんな思いをしなければいけないのか、と思うと気が重かったが、鏡を見ては自分を奮い立たせた。
カメラテストの成功によって、イ・ジェヨン監督はペ・ヨンジュンの主演を決断した。かくして、2002年の秋から、ペ・ヨンジュンは映画初主演の『スキャンダル』に没頭するようになった。こうして、『冬のソナタ』の撮影から始まったペ・ヨンジュンの2002年は、初の映画主演の撮影準備で終わった。
以下は後日談である。
テレビドラマで頂点を究めた俳優も、映画の世界ではまるで新人のように謙虚だった。結果からいえば、それまでの実績を捨てて一から演技に取り組もうという姿勢が功を奏した。映画『スキャンダル』は2003年の秋に韓国で公開されたが、ペ・ヨンジュンの演技が高い評価を受けた。何よりも、「優雅なふるまいが両班の特徴をよく捉えていた」と評されていた。
また、興行的に黒字になったことが大きかった。
それ以前に「時代劇映画は当たらない」と言われてきたのに、そのジンクスを『スキャンダル』は覆した。新しい役に果敢に挑んだペ・ヨンジュンの意欲は、興行的な成功という形でも実を結んだ。
(終わり)
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
韓流20周年特集/ペ・ヨンジュンは冬ソナをどう演じたのか1「冬ソナの直前」
韓流20周年特集/ペ・ヨンジュンは冬ソナをどう演じたのか2「恩師の作品」
韓流20周年特集/ペ・ヨンジュンは冬ソナをどう演じたのか8「熱愛説」