船の中で、安らげる居場所を求めて大部屋の間をウロチョロした。すでに客室では、あちこちで花札が始まっていた。各人が目の前に紙幣を積んでいる雰囲気はまるで賭場のようであり、紙幣も千ウォン札より1万ウォン札が目についた。誰もが旅行気分に浮かれている。
デッキで質問を受ける
韓国人は花札が好きだ。「覚えるのが簡単」「どこでも気軽にできる」「勝負が早く決着する」「何人でも参加できる」という利点が、せっかちで群れたがる韓国人の性格に合っている。実際、韓国を旅していると、花札に興じている人たちをどこでも見かける。一番目にするのが市場。山盛りに並べた野菜の奥には、大声を出しながら花札に興じる年配女性たちがいる。
それにしても、この船内の盛り上がりはハンパじゃない。二等船室は隅から隅まで花札に興じる人ばかり。凄まじい熱気がこちらまで伝わってくる。
私も、ジッとしていられない。もともと賭け事が嫌いなほうじゃないので(というより大好きなので)、客室を何度も回った。
花札もいいのだが、ただ指をくわえて見ているだけ、というのもしゃくにさわる。仕方がないので、デッキに出てみた。
見渡すかぎりの海。とてつもない解放感。これだから船旅はとてもいい。狭い座席におしこめられる飛行機とは大違いだ。寝てもいいし、車座になって酒を飲んでもいいし、乗船から下船まで花札三昧で過ごすのもいい。手足を思う存分に伸ばしたまま目的地に行けるのだからたまらない。
気分よくデッキを歩いていると、なぜかよく話しかけられた。最初は、動画を撮影していた人が、「使い方、わかりますか?」と言う。なんの自慢にもならないが、あまり動画を撮影したことがないので、「ちょっとわかりません」と首を振ったら、相手は大げさに肩をすくめて立ち去っていった。
次に、60代の男性から「この船の料金はいくらですか?」と聞かれた。「すでに乗っているのだから、あなたも知っているのでは」と言ったら、「いや、私はちょっと事情があって……」とうつむいてしまった。一体どんな事情があるのだろうか。
文・写真=康 熙奉(カン・ヒボン)