追憶の済州島紀行10「耽羅の時代」

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もともと住んでいたモンゴロイド系種族と南方系種族の混血が済州島内で進み、独特な州胡人が形成されていったものと思われる。特に南方系種族は体躯が小さく、それが『三国志』韓伝が言うところの「からだが小柄」ということになったのだろう。

済州島の紅葉(写真=済州特別自治道観光協会)




海のターミナル

済州島と九州は地理的にも非常に近いので、古代以前に両地域の交流はかなり活発に行なわれていたはずだ。
当然ながら、血が混じり合うことも多かっただろう。
そういう点を見ても、人間の営みが始まって以来、済州島が日本と無縁だった時期はまったくなかったのである。
おそらく、済州島には東西南北のあらゆる方向から海を渡る技術をもった人たちが集まってきたはずだ。
まさに海のターミナルの役割を果たしたともいえる。
一方、済州島の言語にはモンゴロイド系種族の影響が圧倒的に残った。当時の州胡人がどんな言語を使っていたのかはわからないが、今の済州島の方言を調べると、重要な言葉の多くが北方民族の言語(モンゴル語や満州語)と似ている。
さらに興味深いのは、アイヌ語との共通点だ。「村落」や「城」を意味する言葉を比較していくと、済州島の方言とアイヌ語には驚くほどの類似点があるという。




アイヌ民族の原型は、日本列島が大陸と陸続きの時代に東北アジアからやってきた種族であると言われている。
州胡人とアイヌの言葉が似ているのも頷けるところだ。
なお、済州島は独立国時代に「耽羅(タムナ)」と呼ばれていたが、この「耽」の「Tam」という発音は北方系の言語では「高い」という意味である。
おそらく、漢拏山一帯のことを「高いところ」と称したのが、済州島の古名である「耽羅」となったのであろう。
ここにも、北方民族の言語の影響を強く感じることができる。

文=康 熙奉(カン・ヒボン)

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