朝鮮半島は昔から「東方礼儀之国」と言われた。日本から見れば韓国は西にあるので「東方ってどこ?」と思うかもしれないが、この「東方」というのは、中国から見た方角なのである。つまり、孔子を生んで儒教の礼節にも細かい中国が、朝鮮半島のことを「礼儀之国」と称賛したのである。そんな韓国では初対面の挨拶が特に重要だ。
年上の人を敬う
韓国で礼儀がそれほどまでに重視されるのは、朝鮮王朝時代から続く儒教思想が社会に根強く浸透しているからだ。
礼儀のなかでも、特に年上の人に対する対応が厳格だ。韓国では誰もが、目上の人を尊重することが美徳であると幼いころから教えられており、それが当たり前になっている。それだけに、韓国の礼儀を学ぶときには、年上の人を敬う気持ちを持つことが特に重要なのである。
韓国では、初対面の挨拶をするときによく、名前と職業と年齢を聞いてくる。日本人からすれば、初対面で年齢を聞いてくることに抵抗があるかもしれないが、韓国では相手の年齢を知ることの意味合いがとても大きい。自分より1つでも年上ならば相手を敬い、敬語を使わなければならないのだ。
また、たった一度の挨拶で相手のすべてを知ろうとする、せっかちな気風も影響している。しかし、挨拶を済ませれば、もはや他人ではなく同じコミュニティの人間としてフレンドリーに接してくれるのも韓国ならでは、である。
そのコミュニティのことを「ウリ」(私たち)と呼ぶ。一度お互いが「ウリ」になったら、本当に親身に接しようとする。試しに、何か頼みごとをしてみよう。まるで幼なじみであるかのように一肌脱いでくれることだろう。
挨拶のときに職種を聞くのにもワケがある。韓国では、名前を気軽に呼ぶのは一定以上の友人関係のときであり、ある程度の身分の人を呼ぶときには、役職を付けるのが一般的なのだ。
そのために職業を知っておきたいというわけだ。
また、初対面で男性が挨拶をするときに気を付けることは、握手の方法だ。韓国で握手を求められたとき、片手だけで握手をしたら冷ややかな視線を浴びることになる。なぜなら、握手をするときは、握手するほうの腕に片手を添えるのが普通だからだ。あるいは、空いている手をお腹にあてるか、握手する手をもう片方の手で包むのも好ましい。他にも、物を受け取ったり渡したりするときも同様の動作が求められる。
韓国では、この動作が礼儀以前の一般常識となっている。それゆえ、コンビニの店員さんもお釣りを渡すとき片手でチャリンとそっけなくしたりしない。ちゃんと片方の手を添えながら、小銭を乗せた手のひらを差し出すのだ。このことを踏まえても、韓国では片手はNGだ。
両手を出しておけば問題ないともいえる。
とにかく、韓国では初対面のときの挨拶が重要。そこをうまくこなせないと、悪い印象がずっとつきまとってしまうので注意しよう。
文=「ロコレ」編集部