ハン・ヒョジュが24歳のときにNHKで記者会見をした当時をプレーバックする企画記事の2回目。『トンイ』で芯の強い主人公を演じたことで、ハン・ヒョジュ自身も大きな影響を受けたようだ。
史料が少ない女性
ハン・ヒジュが演じたトンイは、歴史的には淑嬪(スクピン)・崔(チェ)氏として知られる女性だ。低い身分の出身ながら19代王・粛宗(スクチョン)の側室となり、のちの21代王・英祖(ヨンジョ)の母になっている。
粛宗の場合、最初の妻は19歳で亡くなっている。二番目の妻は仁顕(イニョン)王后で、人柄が良かったが子供に恵まれなかった。そのときに粛宗に近づいたのが張禧嬪(チャン・ヒビン)だ
彼女は粛宗との子を成して仁顕王后を正室から追放した。しかし、度が過ぎるほど策を弄した。結局、張禧嬪は、仁顕王后を呪い殺そうとしたことが発覚して死罪となった。
代わって、粛宗の寵愛を受けたのが淑嬪・崔氏だった。彼女は聡明だったとされるが、その人物像は詳しくわかっていない。その彼女を甦らせて壮大な歴史物語の主人公として輝かせたのがイ・ビョンフン監督である。さすが韓国時代劇の巨匠だ。
ただ、トンイに扮するハン・ヒョジュにしてみれば、そのキャラクターを作るうえでは苦労が多かったようだ。
「撮影が始まる前、トンイについて詳しくなかったので、ぜひ調べなければならないと思い、いろいろ勉強したり資料を集めたりしました。けれど、トンイについて書かれている資料が本当になかったんです」
「監督や作家の方たちが『こういう人物だったのだろう』という想像で作る部分が多かったようです。彼女についての資料がなかったので、私も調べるのが大変でした」
ハン・ヒョジュはそう振り返るが、逆に言うと、歴史の中で知られていない人物だからこそ自分で新しいイメージを加えられるのである。そこに俳優としてのやり甲斐があった。
文=康熙奉(Kang Hibong)
写真=富岡甲之(Tomioka Yoshiyuki)
【24歳のハン・ヒョジュ】第4回/『トンイ』の撮影を通して得た手応え