2006年に韓国で放送された時代劇『ファン・ジニ』の主演は主人公ファン・ジニを演じたハ・ジウォンだが、ドラマを見ていて釘付けになったのがチャン・グンソクのピュアな存在感だった。今回、『韓国ドラマ!愛と知性の10大男優』(康熙奉〔カン・ヒボン〕著/星海社)を通して、チャン・グンソクの魅力について迫ってみよう。
勘の良さ
チャン・グンソクは、美しいファン・ジニに一目ぼれする両班(ヤンバン)の御曹司ウノを演じていた。当時のチャン・グンソクは19歳。ファンタジーの世界から抜け出してきたようなルックスを持っていた。まさに「こんな端整な美少年は見たことがない」と思えるほどだった。
ドラマの中でウノは最下層の身分のファン・ジニと恋に落ちるが、厳しい身分制度を採用していた朝鮮王朝では、まぎれもなく「禁断の恋」だった。結局、許されない恋に疲弊したウノは命を落としてしまう。
親より先に死んだ親不孝な息子として、亡きウノは両班の葬儀を受けられず、彼の棺を載せた荷車は屋敷の外に出されてしまう。その荷車が、ファン・ジニが住んでいた宿舎の前を通っていくときにピクリとも動かなくなる。
まるでウノが今でもファン・ジニを慕っているかのように……。
見かねたファ・ジニが進み出て上着を棺にかけてあげる。「もう終わりました。安らかに眠ってください」と声をかけているかのように。
すると、ようやく荷車が再び動きだしていく。
当然ながらこの場面でチャン・グンソクの出番はなかったのだが、彼が演技上で残したイメージが余韻となって、珠玉のシーンとなっていた。
以後、様々なドラマで主役として存在感を示してきたチャン・グンソク。たとえば、演技がうまい俳優の必須条件に「勘の良さ」がある。
どんなにセリフを頭にしみこませても、どんなに練習を重ねても、勘の悪い俳優は視聴者の肥えた目を納得させることはできない。
逆に、勘のいい俳優は、その持ち味を存分に発揮して視聴者をうならせる。チャン・グンソクの場合も、天性の勘の良さを持っている。特に、表情が極端に変わる場合(喜怒哀楽が激しく変化するとき)の切り替えが見事である。
子役時代からの経験も生きていると思うが、それ以上に大きいのは、生まれ持った表現力だ。それが本当に素晴らしいのだ。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
チャン・グンソクの肖像2/『韓国ドラマ!愛と知性の10大男優』が描く世界
ヒョンビンの肖像/『韓国ドラマ!愛と知性の10大男優』が描く世界
キム・スヒョンの肖像/『韓国ドラマ!愛と知性の10大男優』が描く世界