確実にファンを増やし続けているイ・ソンギュン×イ・ジウン(IU)主演『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』。しかしまだ観ていない人が意外に多い。そんな人たちのために改めて本作の魅力を簡単にお伝えしよう。
ずっと心に残る名作
最近「枯れ専」という言葉を知った。「枯れ専」とは40代以上の男性しか恋愛対象にならない20代女子を指す言葉だそうだ。韓国ドラマ『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』はタイトルだけを聞くとそんな「枯れ専」を描いた作品なのかと思われがちだ。
しかしそれは大きな誤解。原題がそもそも『私のおじさん』ということもあり、当初は若い女性と中年男性のラブストーリーではないかと勘違いする人も多かった。
ところが、この作品はタイトルから連想されるような内容とは全く違う世界観を描いた号泣必至のヒューマンドラマ。本作は人生の重さに耐えながら生きているおじさん三兄弟と不遇な人生を生きてきた若い女性が主役だ。
彼らがお互いを癒しながら前を向いていく物語である。序盤は重苦しい雰囲気が漂っているため視聴をやめてしまったという声もある。だが「とにかく最後まで観て!」と人に勧められて再視聴し「そういうことだったのか!早く観ればよかった!」という絶賛の声のほうが断然多い。
本作は女性だけでなく男性視聴者がかなり多いのも韓国ドラマとしては珍しい。日本国内でも作詞家・松本隆氏や作曲家でありピアニストの坂本龍一氏など数多くの著名人が本作を絶賛している。
また本作は是枝裕和監督をも魅了し、映画『ベイビー・ブローカー』に本作の主演女優イ・ジウン(IU)を抜擢したほどである。心を打つ名セリフが多いため、放送から4年を経て台本集まで発売された。
これに加えて、滅多に人の作品を褒めないと言われているイ・ビョンホンまでが「これは観たほうがいい」と太鼓判を押しているというのだ。これだけでいかにこの作品が素晴らしいかがわかるだろう。
幼い頃から不遇な人生を歩んできた主人公のジアン(イ・ジウン)は耳の不自由な祖母の世話をしながら心を閉ざして暮らしている。
そんなジアンが人間的な職場の上司ドンフン(イ・ソンギュン)と出会い徐々に心を開いていくところが本作の主軸。また、人生の重さに耐えながら生きていたドンフンもあることからジアンに救われることになる。
そんな2人と、彼らを取り囲む人々との繋がりによって、薄れつつある人間同士の絆や人として大切にすべきことがまざまざと映し出される。人間には人に対する本能的な優しさがある。『マイ・ディア・ミスター』はそれを思い出させてくれる作品だ。
また、若者には「未来は自分次第で変えていける」ということを、中年以降には「何を成し遂げたかより今を生きることの大切さ」を考えさせてくれる作品でもある。どんな状況下にいようとも、この世に価値のない人間などいないのだと思わせてくれる。
『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』は確実にファンを増やしているとはいえ、未だNetflixのTOP10に入ってくることはない。こんな名作なのになぜだろう?と思ったこともあるが最近ではそれでいいと思うようになった。
この作品は「流行りモノ」ではないからだ。今までもこの先も本当にこの作品に感銘を受けたファンがずっと慈しんでいくような作品であってほしいと願っている。本当の名作はずっと心に残る。
文=朋 道佳(とも みちか)
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