ドラマ『二十五、二十一』の第2話では、ペク・イジン(ナム・ジュヒョク)が借金取りに責め立てられる場面があった。彼はひたすら謝ることしかできなかった。その場面をナ・ヒド(キム・テリ)が見てしまった。
少しの幸せ
「何もできなくて申し訳ありません」
謝罪を繰り返すペク・イジンは、覚悟を決めて言った。
「そのかわり、僕は絶対に幸せになりません。おじさんたちの苦痛を感じながら生きていきます」
「どんな瞬間でも本当に、幸せになりません。申し訳ありません」
そう言って自分を苦しめるペク・イジンを遠くからナ・ヒドが見ていた。
「幸せにならない」
こんな決意をするなんて、22歳の若者にとって、どんなに辛かったことだろう。
その痛みが心底わかるナ・ヒドは、ペク・イジンを校庭に連れて行く。
そして、水道の一つの蛇口をさかさまにして臨時の噴水を作る。
すると、ペク・イジンがすべての蛇口をさかさまにしてスケールが大きい噴水にしてしまう。
喜ぶナ・ヒドの無邪気さがペク・イジンを救っていく。
「さっき、おじさんたちに、これからどんな瞬間にも幸せにならない、と言ったでしょ。私は反対よ。時代のせいなのに、なぜ諦めるの? でも、おじさんたちに約束したから、こうしよう。私と遊ぶときだけは、おじさんたちに内緒で幸せになるのよ」
そう言って、ナ・ヒドは最高の笑顔を見せた。
そんな彼女を恥じらいながら見ているペク・イジン。
ナ・ヒドの笑顔がまぶしい。
「2人でいるときは、少しだけ秘かに幸せになろう。これは2人だけの秘密よ」
季節は真夏の夜。奥にトンネルが見える。
そのトンネルは過去と未来をつなぐ回路となるのか。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
会えなくても心で会える/とてつもない傑作物語『二十五、二十一』4