韓国時代劇の歴史背景がわかりやすく説明されているのが『新版 知れば知るほど面白い 朝鮮王朝の歴史と人物』(康煕奉〔カン・ヒボン〕著/実業之日本社発行)である。この本の一部を掲載して、韓国時代劇の理解に役立つ知識を紹介しよう。第5回は「三大悪女」だ。
張禧嬪とはどんな女性?
韓国で3大悪女といえば張緑水〔チャン・ノクス〕、鄭蘭貞〔チョン・ナンジョン〕、張禧嬪〔チャン・ヒビン〕。それぞれ、自分の私利私欲のために権力者を徹底的に利用した悪女ばかりだ。
張緑水は、10代王の燕山君〔ヨンサングン〕の側室。史上最悪の暴君を陰で操った“欲のかたまり”として知られる。
鄭蘭貞は11代王・中宗〔チュンジョン〕の王妃だった文定〔ムンジョン〕王后に仕えていた。権力の亡者で、対抗する人間を蹴落としていくさまは、あまりにえげつなかった。
最後に控えた張禧嬪は伝説の悪女。粛宗〔スクチョン〕の側室になり、ついには本来の正室を追い出して念願の王妃にまで上り詰めた。
その個性がよほど制作者の気をそそるのか、彼女ほどあちこちの映画やドラマにひっぱりだこの人物も他にいない。ドラマ『トンイ』でもイ・ソヨンが張禧嬪を演じている。実際の張禧嬪は、どんな女性だったのだろうか。
貧しい幼女時代を送った張禧嬪は、幸運にも、知り合いの後押しで宮女となった。美貌と虚栄心は人一倍だった。彼女は粛宗の側室になり、粛宗との息子まで産んだのだから、信じられないような出世をとげた。
こうなると、手に入れたいのは正室の座。邪魔なのは、子供を産めない正妃の仁顕〔イニョン〕王后。張禧嬪は粛宗をそそのかして正妃を追い落とし、念願の正室になった。
しかし、悪の栄華が長続きしないのは世の常。激しい派閥闘争の渦中で、張禧嬪は仁顕王后の正室返り咲きを許す結果になった。
ここからが張禧嬪の真骨頂。仁顕王后の部屋に穴を開けて中の動向を探ったり、呼び捨てにしたり、「あの女は最悪」と罵倒したり……。
このあたりの嫌がらせはドラマの題材になりやすく、張禧嬪の出番が増える理由になっている。
さらに、彼女は神堂を建てて仁顕王后を呪い殺そうと躍起になった。それが効いたわけではないだろうが、仁顕王后は病にかかって亡くなった。
宮廷内は大騒ぎになるが、密告によって張禧嬪が正室を呪っていたことが発覚。重大な反逆罪に問われ、張禧嬪は粛宗によってあえなく毒殺の刑を申し渡された。こうして、野望のために手段を選ばなかった張禧嬪は、42歳で息を引き取った。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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