『無法弁護士』でイ・ジュンギが演じるポン・サンピルという主人公は、非常に複雑な環境の中で育った。彼の母親は弁護士だったのだが、悪の勢力に殺害されてしまう。その場面を少年時代に目撃したサンピルは心に深い傷を負った。
魅力的な主人公
主人公のポン・サンピルがたどった道が異色だ。母親の弟であるヤクザのチェ・デウン(アン・ネサンが演じている)に育てられ、闇の世界に生きながら弁護士になった。
しかし、普通の弁護士ではない。
法律だけでなくて拳を使ってでも顧客の勝利のために奮闘する熱血漢だ。ソウルで成功したサンピルは、故郷のキソンに戻って母親の復讐を果たそうとする。
そんなサンピルの相棒になるのが、女性弁護士のハ・ジェイだ。ソ・イェジが演じている。
ジェイは優秀な弁護士だったのだが、理不尽な判決にがまんならずに判事を殴り飛ばしてしまう。
それによって、弁護士活動を停止されて故郷のキソンに戻ってきた。しかし、驚いてしまった。写真スタジオを経営していた父親は多額の借金を抱えていて、大きなトラブルの渦中にあったのだ。
そんな状況の中で、ジェイはサンピルと会った。
サンピルはジェイの能力を見込んで、自分の弁護士事務所の事務局長を依頼する。
ジェイはサンピルが気に入らないのだが、父親の借金を返すためにはそうせざるを得ない事情があり、結局は依頼を承諾する。
こうしてサンピルとジェイは2人で組んで、本格的な弁護活動に入っていった。
とにかく、第1話からスリリングな展開の連続だ。その中で、イ・ジュンギが縦横無尽の演技とアクションを見せている。
あるときはキレのいいアクションでヤクザに立ち向かい、あるときは卓越した法律の知識で問題を解決していく。
このように、サンピルは「拳」と「法」で顧客の勝利を獲得する風変わりな弁護士。こういう難しい役を演じるときのイ・ジュンギは俳優魂が全開となる。
演技力は言うまでもない。ドラマの中でのサンピルは自信過剰なところがあって、どんな危険な場面でも余裕を持って対処していこうとする。
見ていてハラハラさせられることも多いのだが、イ・ジュンギのメリハリのある演技が各シーンを見事につないでいる。
ジェイはとても勝気な女性弁護士という役で、サンピルとは衝突してばかり。必然的にソ・イェジとイ・ジュンギの言い争いが増えるが、イ・ジュンギの「立て板に水」のようなしゃべりは実に快感だ。
画面を見ながら、何度もうなずいてしまうほどなのだ。
また、『無法弁護士』には哀愁が漂っている。
なにしろ、主人公のサンピルの心の傷はとても深い。弁護士だった母親が自分の目の前で殺されたという深い傷は癒やされない。
最愛の母は、死ぬ前に「絶対にキソンに帰ってきてはいけない」と少年時代のサンピルに厳命した。
しかし、その言葉に反してサンピルは故郷のキソンに帰ってきてしまった。そこは、様々な利権が絡む悪の巣窟とも言える街であった。
手ごわい敵ばかりだ。
その中で、サンピルはどのように弁護士として活躍し、愛する母の復讐を果たしていくのか。
演じるイ・ジュンギは、魅力的な主人公に扮して、惚れ惚れするような演技とアクションを見せてくれる。
まさに彼の真骨頂が存分に見られるドラマ……それが『無法弁護士』だ。
文=康 熙奉(カン ヒボン)