ヒョンビンは、『愛の不時着』で北朝鮮の将校を演じた。意志の強さが随所に見られたキャラクターであったが、彼が強烈な個性を見せた演技としては映画『王の涙 イ・サンの決断』もとても印象的だった。
筋骨隆々の正祖
映画『王の涙-イ・サンの決断-』でヒョンビンは朝鮮王朝の22代王・正祖(チョンジョ)に扮した。
何よりも、ヒョンビンは映画を通して逞しい国王像を作り上げていた。映像的に言えば、弓を引くときの背中の筋骨隆々ぶりがまぶしかった。
この『王の涙 イ・サンの決断』は2014年に韓国で公開されたのだが、ヒョンビンは「あえて正祖を描いた他の作品を見ようとしませんでした」と語った。
それは、自分なりに新しい正祖を演じたいと思ったからだ。
「困難な時代に正祖は、かならず生きなければならないし、自分の政権を守らなければならなかったのです。それだけに、映画ではこれまでにない緊迫した正祖をお見せしたいと思いました」
ヒョンビンはこう述べた。そして、彼は自分がオリジナルな表現をどのようにすべきかを考え抜いた。
そのうえで、ヒョンビンなりに重要なことに気づいた。
「脚本を何度も読むと、正祖は自分の命を守るために、苦しい環境の中で鍛練を続け、すさまじい生き方をしたのではないかと考えました」
具体的にヒョンビンが行なったのは何なのか。
彼がシンプルに言う。
「からだを鍛えました。とにかく、徹底的に鍛えました」
こうして、 映画の中で筋骨隆々の正祖が登場することになった。それは今までにない斬新な国王の姿であった。
実際、『王の涙-イ・サンの決断-』では、ヒョンビンが肉体的にも強い正祖に成りきっていた。
そこで培われたイメージは、やがて『愛の不時着』で演じた北朝鮮の将校の強さと優しさに受け継がれていったのである。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
なぜヒョンビンを語ると高揚するのか1「目的意識が他の人と違う」
なぜヒョンビンを語ると高揚するのか2「経験を積むことが大事」
なぜヒョンビンを語ると高揚するのか4「研ぎ澄まされた演技力と存在感」