根は親切
アジュンマは、雰囲気からいって女主人であることは間違いない。ニッコリ笑って、網で焼いていたカルビを手際よくハサミで切り始めた。
このアジュマがやたらと明るい。こちらが日本から来たと知って、ブロークンな日本語で怒濤のように話しかけてきた。
「あんたたち、いい男だから、私が食べさせてあげるわ。ホラ、肉はこうして味噌を付けて葉っぱに巻いて食べるとおいしいのよ。口をアーンと開けて。なに、恥ずかしがってんの。口を開けなさいってば。そうそう、でっかい口ねえ、何でも食べられそうね。そっちのメガネの人も口を開けて。日本はどこから? 東京? 東京って物価が高いんだってねえ。韓国のほうが肉は安いから、もっとカルビを食べなさいよ。もう2人前、持ってこようか」
話が途切れたと思ったら、注文の催促である。いかにも商売上手なアジュマだ。
しかし、根は親切。次々に、新しい一品料理を持ってきてくれた。
すべて無料。本当にうれしい。
満腹になったところでアジュマの笑顔に見送られて店を出た。
韓国で美味しいものをたくさん食べるという醍醐味を感じた。
文=「ロコレ」編集部