韓国時代劇に登場する人物と歴史にスポットを当てたわかりやすい歴史解説書が『いまの韓国時代劇を楽しむための朝鮮王朝の人物と歴史』(康熙奉〔カン・ヒボン〕著/実業之日本社発行)です。この本は韓国時代劇を扱っていますが、基本にかえって、韓国時代劇の四つの特徴について考えてみましょう。
対立軸を明確にする
韓国時代劇の一番目の特徴は、主人公がいじらしいほど一途に頑張るということです。韓国時代劇の巨匠と称されるイ・ビョンフン監督の作品は特にこの傾向が強く、その基本方針がストーリーの全編を飾っています。
「主人公が一途に頑張って最後は成功に結びつくというサクセス・ストーリーは、視聴者に共感してもらえて視聴率が高くなる」という方程式に沿ってイ・ビョンフン監督は時代劇を作っています。『宮廷女官 チャングムの誓い』『イ・サン』『トンイ』『オクニョ 運命の女(ひと)』など、イ・ビョンフン監督の作品は日本でも人気がありますが、ことごとく、主人公が一途に頑張るという内容です。
特に、“一途”というところが鍵になっています。現実であれドラマであれ、人が一途に何かに取り組んでいる姿は清々しいものです。
韓国時代劇の二番目の特徴は、厳しい身分制度が必ず出てくるということです。特に、朝鮮王朝時代を描いたドラマでは身分制度が大きなキーワードとなっています。なぜなら、この時代の社会は身分制度を抜きにしては語れないからです。
特に、身分制度で一番下に位置づけられたのが賤民(チョンミン)です。奴婢、芸人、妓生(キセン)などが含まれますが、この人たちはドラマの中でいつも虐げられています。しかし、決して黙っていません。最下層の身分ながら、自分の才覚で必死にのしあがっていこうとします。そこにドラマ性が生まれる下地があり、韓国時代劇はそういう人たちを好んで登場させます。
三番目の特徴は、登場人物たちの対立軸を明確にするということです。
つまり、対立する両者が葛藤することでいろんな問題が起きる……これがドラマの中心設定であり、ひと筋縄では解決できない問題が登場人物たちの関係をややこしくします。特に、悪役が重要となります。その悪役もただ性格がひどいというように描かないで、立場上そうならざるを得なかった理由を必ず盛り込みます。
たとえば、『王女の男』を見てみましょう。
(ページ2に続く)
張禧嬪(チャン・ヒビン)はワガママ粛宗(スクチョン)の犠牲者の1人!
『七日の王妃』の端敬(タンギョン)王后を物語る赤いチマ岩の伝説とは?