インターネットの発達は、韓国の芸能界に試練を与えている。芸能界で不祥事が目立つようになってきたのは、芸能人のモラルが低下したからではなさそうだ。その背景にあるものを考えてみよう。
社会が変わってしまった
長く韓国社会をしばってきた伝統的な道徳観は「孝」と「忠」だった。これは、儒教思想に基づくものである。
両親や先祖に最大の経緯を示す「孝」と、組織や上司に忠誠を尽くす「忠」は、韓国人がかならず身につけなければならない道徳観だった。さらには、家族主義によって個人の自由度を制限するのも韓国社会のしがらみであった。
加えて、韓国は1987年まで軍事政権が続いた。表現の自由は限られ、国家によって個人が監視される社会でもあった。
そんな軍事政権が終わって30年が経つが、この間に韓国社会は大きく変わった。伝統的な道徳観による弊害となっていた「男尊女卑」「官尊民卑」「個人の自由の制限」は年ごとに改善されてきたし、厳然たる序列社会にも平等の価値観が少しずつ浸透してくるようになった。
ただし、芸能界はその変化があまりに緩やかだった。芸能マネジメントのシステムが古い体質のままに残ってしまった部分もあったのだ。隷属的な契約問題はその一端だし、芸能事務所が所属する芸能人を管理する手法も抜け穴が多かった。
それでも、インターネットが飛躍的に普及する以前には、芸能人の不祥事が表沙汰になることは少なかった。韓国には芸能スキャンダルを暴く雑誌もなければ、テレビのワイドショーも芸能ネタを扱わなかったからだ。マスコミは芸能界と同じ村社会を形成し、お互いに「持ちつ持たれつ」の関係を築いていた。
しかし、そんな状況をインターネットが変えてしまった。(ページ2に続く)