陰陽を使い分ける演技
『テバク』のストーリーは1693年から始まっていた。このときの粛宗の正室は張禧嬪(チャン・ヒビン)だった。
しかし、李麟佐はポクスンという女性に目を付けて、粛宗の側室に送り込もうとする。ポクスンは王宮内で洗濯、水汲み、掃除などを担当する雑役係の女性である。彼女には博打に身を崩している夫がいるのだが、李麟佐はポクスンが夫を見限るように策を弄していく。
こうした展開の中で、チェ・ミンスとチョン・グァンリョルがさすがの演技を見せている。どこが「さすが」かというと、通り一遍の演技ではなく、その人物にいくつもの光を当てて、そこから生じる陰の部分をさりげなく見せている。
特にチェ・ミンスの場合は、威風堂々たる王を演じながら、どこか頼りない部分をチラリと見せる。
そこに、視聴者は人間味がある王という存在を感じるのではないだろうか。
チョン・グァンリョルの場合は、謎めいた裏世界の人物を演じながら、そこに使命感のような信念を裏付けしている。
表現の仕方がとても重層的なのである。
このように、粛宗を演じるチェ・ミンスと、李麟佐に扮するチョン・グァンリョルの陰陽を使い分ける演技の凄味がドラマを引き締めている。(ページ3に続く)
今年上半期のドラマで最高の演技を見せたのは『テバク』のチェ・ミンス!