晴れやかな日
西宮の中庭にひれ伏していた綾陽君。彼は、クーデターの成功に感極まり、思わず涙を流した。すると、彼に従っていた者たちも、つられて号泣し始めた。
そんな中で、ついに仁穆王后が現れた。
彼女は、男たちに優しく声をかけた。
「泣くのをやめなさい。めでたいことをしたのに、なぜ泣く必要があるのか」
すでに仁穆王后の怒りは解けていた。彼女は今まで無視され続けたことに腹を立てたのだが、それは一瞬のことで、クーデターの成功をことのほか喜んだ。
「まさか、こんな日がくるとは、夢にも思わなかった」
仁穆王后はそう言って綾陽君をねぎらったが、その気持ちは貞明公主も同じだった。
彼女は、ずっと絶望の中にいた。弟の永昌大君を殺され、自分も王女から庶民に降格となり、母と一緒に監禁されていた。
どんなに光海君が憎かったことか。
それが、今ようやく復讐を果たせる機会が訪れたのだ。これほど晴れやかな日が他にあろうか。
(第5回に続く)
文=康 熙奉(カン ヒボン)
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