欠点から自分の特徴を作りだす
ウォンビンは、20代後半から30代初めという大事な時期に、俳優としてあまり活動できなかった。このことが、どれほど彼の重荷になっていることか。
多くの俳優たちが常に、固められた自分のイメージを克服しようとして「変身」を企む。しかし、そのほとんどは失敗に終わり、元の位置に戻るか、最悪の場合は人気を失ってファンからも忘れられてしまう。
その原因は俳優が単に既存の自分を否定し、破壊しようとしたからだ。善くも悪くも、今は自分の足を引っ張っていると思えるその既存のイメージがあったからこそ、ある程度の人気も得られたのに……。
それを破壊したら、結果が思わしくないのも必然だ。
ウォンビンは違う方法を選んだ。既存の自分を否定してその反対側に走るのではなく、ファンの視線を少し、しかし、明確に違う方向に誘導する方法を選んだ。
ウォンビンがそのような方法を選ぶことができたのは、ファンの間で彼を見守り保護してあげたいという気持ちが作用しているということを自覚したからではないだろうか。
ウォンビンがもし完全に新しいイメージを作ろうとしたら、ファンは狼狽しただろう。そうではなく、彼は既存の弱くて保護されるイメージを一層複雑で多様な可能性を持った深みに入り込ませたのである。自分の欠点をただ克服するのではなく、欠点から自分だけの特徴を作り出そうとしたのだ。
そのような彼の意図は成功したと思える。これは、ウォンビンが持っているイメージが、強くて仰ぐようなものでなかったことも幸いした。
ウォンビンは、俳優であると同時にスターでもある。本来、スターとはファンから仰がれる対象なのだが、ウォンビンの場合はちょっと事情が違う。ファンは彼を単に仰ぐのではなく、ずっと見守りたいという気持ちを持っていた。
ウォンビンは、そのようなファンの気持ちと自分のイメージがうまく重なれば、多様な可能性を発揮できると知ったことだろう。(ページ3に続く)