情熱と努力の賜物
キム・ヒョンソクは、今回の作業に参加する前まではイ・ジュンギについてあまり知らず、彼をただ映画1本でスターになった運の強い若僧くらいにしか考えていなかった。アルバムをプロデュースするオファーが入ったときも「最近は俳優も歌手も本業だけではなく様々なジャンルをやるのが流行だから、演技しながら軽い気持で歌うのだろう」と思っていたという。そこで、ファンが喜ぶような聴きやすくて軽い感じの曲を何曲か書いてあげたらいいだろうと考えたそうだ。
「マネージャーが置いていったイ・ジュンギのファン・コンサートの資料を見て僕の浅い考えは無惨に壊れました。彼のコンサートの企画資料を見て、すごく慌てたんです。彼はプロで、トレンドを作れる人で、アーティストだったのです。冷や汗をかいたほどです。軽く簡単に済まそうと思った僕の判断は間違いでした」
キム・ヒョンソクはそう語るが、彼はイ・ジュンギと最初に会議をした日に、「なるほど、こうだからイ・ジュンギは成功したのか」と思ったという。ファンのためのコンサートなのに、照明一つにしても細かいアイディアを出すイ・ジュンギを見て、彼についての考えが完全に変わってしまった。
「ごく稀に、ある人は自分の才能の限界にたえず挑戦してそれを克服します。アルバム・プロデューサーとしてこのような人に出会うのは、宝くじに当たるのと同じです。一緒にする作業自体が幸運です。そんな人はこちらが一つを求めると十を作ってくれます。それがイ・ジュンギでした。レコーディングのときも納得するまでは夜中の3時になってもやめませんし、プロモーション・ビデオの撮影のときも2日間一睡もしないまま徹夜で踊るシーンを撮っても決して笑顔を忘れないんです」
キム・ヒョンソクはイ・ジュンギの情熱と努力に惚れこみ、これを機会に歌手としてデビューすることを勧めた。しかし、イ・ジュンギはこう答えた。
「俳優としての人気だけを頼りに歌手になると、何年も汗を流してやっと舞台に立った歌手の皆さんに申し訳ないです。今はただ、私を愛してくださるファンの方のために準備する気持で一生懸命やりたいだけですよ」
この言葉からも、イ・ジュンギの真剣さと謙虚さが同時にうかがえる。
(次回に続く)
文=朴敏祐(パク・ミヌ)+「ロコレ」編集部