夏こそ行きたい!韓国南部の旅6

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海の沖に見える島が茅島

三つのことを自慢するな

ふと見ると、屋台の陰に観光案内所がポツンとあった。といっても、小さなプレハブの小屋だ。海側に向いた小さな窓も閉められていて、中に人がいる気配はしなかった。それでも、念のためと思って声をかけてみると、窓が開いて40代の女性が姿を現した。パーマをかけた髪と、派手に塗った赤い口紅。どこから見ても、隙がないほど典型的な韓国のアジュンマ(おばさん)だ。

観光地図をもらいながら話し込んだ。アジュンマは大変親切な人で、日本から来たと言うと大いに喜んでくれた。

「最近は日本からも多くの人が来るようになったわよ」

「やっぱり、『珍島物語』が日本でヒットしたからですね」

「ホントにありがたいわ。歌っている歌手は、なんて言ったっけ?」

「天童よしみ、ですか」

「そう、そう。そんな名前だったわ。感謝したいわね」

アジュンマによると、海割れは年に何度か起きるそうだ。

しかし、明け方や深夜では多くの人が集まれない。その点、旧暦の2月下旬か3月の初めに起こる海割れは夕方なので、人が集まりやすい。新暦でいえば4月中旬か下旬に当たるという。2時間ほど海が割れて大勢の人が茅島まで歩いて行けるということだ。

今は海が割れていない。茅島も海の先に見えている。目を閉じて、海が割れている場面を想像するしかなかった。

帰りに乗ったタクシーの運転手さんは60代だと思われるが、とても感じがいい人で、珍島の郷土自慢を盛んに語った。

「珍島では『三つのことを自慢するな』と言われているんだ。一に書、二に絵、三に歌。珍島の人はこの三つが得意なので、たとえ巧くこなしても自慢にならない、というわけだ。特に、珍島のどの村にも名人がいるのが歌だよ。渋い声のアジュンマが有名な『珍島アリラン』を披露してくれるよ」

朝鮮半島の民謡を代表する「アリラン」は、地方ごとに独自の曲があるが、「珍島アリラン」は特に有名である。

残念ながら、名人に会えなかったので、テープの曲で満足するしかなかったが……。

(第7回に続く)

文=康 熙奉(カン ヒボン)

出典=「韓国のそこに行きたい」(著者/康熙奉 発行/TOKIMEKIパブリッシング)

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