いずれ変化の時がくる
自信喪失……。
暗闇の中で自分が進むべき道を見つけられなかった。
けれど、彼にはまだ一つの希望が残っていた。それが向上心だった。
座しているより無我夢中で前に進もうとしたとき、最後になってようやく薄日がさした場所を見つけた。それが、俳優という舞台だった。
その後の活躍は誰もが知るとおりだが、私たちが忘れてならないのは、ペ・ヨンジュンが韓国で生まれ育った生粋の韓国人であるということだ。
たとえば、ビジネスに関わる彼について「俳優なのになぜそこまで……」と考えたとしたら、そこに「韓国」という言葉を当てはめると、一つの理由が浮かんでくる。
朝鮮王朝時代の儒教社会は本来、「文」を尊び「商」を蔑んだが、現代韓国では「商」を尊ぶ風潮がますます強まっている。統計によると、韓国は全職業の中で自営業の割合が世界で最も高い国の一つであるという。誰もが社長になりたがり、勤め人より自営を選びたがるのだ。
ここで思い出すことがある。ペ・ヨンジュンが小学生のとき、彼の父は会社勤めをやめて牧場経営に乗り出したが、その転身は失敗に終わった。その一部始終をペ・ヨンジュンも間近で見ていた。そのときの記憶は、その後も折にふれて甦ってきたことだろう。どんな子供も、父親の仕事の影響から逃れられないものである。
今、ペ・ヨンジュンが俳優を休業して実業家になっているのは、自営業が多い韓国で父親の事業の失敗を目の当たりにしてきたことも無縁ではないだろう。
もはやペ・ヨンジュンの本業は「俳優」とは言えない状況になっているが、自分が父親になったときに心に変化が生まれるかもしれない。
「我が子にぜひ新しい主演作を見せたい!」
もしペ・ヨンジュンがそういう心境になったら、毎年ペ・ヨンジュンの誕生日を欠かさず祝っていた人たちは、「待ち続けた甲斐があった」と心から思えるのであろう。
文=康 熙奉(カン ヒボン)