華のある存在感
映画『暗殺』の中で、チョン・ジヒョンの美しさにハッとさせられたのは一度や二度ではない。不思議な殺し屋を演じた共演のハ・ジョンウと偽の夫婦役になるときの戸惑い、独立運動家を装った密偵のイ・ジョンジェから見送られるときの愁い、そして、初めて大衆の中でダンスを踊るときの恥じらい……それぞれのシーンに女優の美しさが散りばめられている。
今、チョン・ジヒョンは人生で一番美しいのではないか。
そう思ってしまうのも、映画『暗殺』の中で彼女が見せるシーンの一つひとつに魅せられてしまったからだ。
ちなみに、チョン・ジヒョンがイ・ジョンジェと共演するのは3回目だが、一番最初は2000年に制作された『イルマーレ』だった。あのときの彼女は、ふっくらした印象の初々しい女子大生だったのだが、まさかその直後に『猟奇的な彼女』で大ブレークするとは夢にも思わなかった。
あれから10数年。韓国映画界の最前線を走り抜け、今度もまた『暗殺』で当代随一の演技を見せた。華は、彼女の立つところから生まれてくる。
今年2月には出産して母になった。『暗殺』は、母になる前の最後の映画ということになるのだろう。そう思うとよけいに、チョン・ジヒョンの美しさがいとしくなる。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
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