オリンピックに救われた
民正党を代表して盧泰愚(ノ・テウ)は1987年6月29日午前に「国民の大団結と偉大な国家への前進のための特別宣言」を発表し、大統領直接選挙制を骨子とした事態収拾案を発表した。
主な内容は次の通りだ。
◆与野党の合意のもとで憲法を改正。大統領直接選挙によって平和的に政権を委譲する。
◆基本的人権を尊重して言論の自由を保証。社会の各分野で自治と自立を確立する。
ここまで与党が譲歩するようになったのも、国民の根強い抗議行動があったからだ。さらに、翌年秋にソウル五輪を控えていたことも見逃せない。盧泰愚は談話をこうしめくくっている。
「オリンピックまでわずかしか残っていない現時点で、国論が分裂して韓国が世界から辱めを受けるようなことがあっては断じてならない」
この盧泰愚の譲歩案を金泳三も最大限に評価し、「国民に希望を与える内容だ」として全面的に歓迎する意向を示した。
ただし、その譲歩案を全斗煥が受け入れるかどうかは微妙な情勢だった。(ページ3に続く)