興行的に大丈夫?
それまで、出演要請を受けて100本近くの映画シナリオを読んできたが、イ・ジェヨン監督の新作ほど心が動くものはなかった。
早速、その映画のシナリオを取り寄せて読んでみた。
そこには、自分がそれまでに演じてきた役とまったく違うキャラクターの主人公がいた。軽薄で女たらしで嘘つきで……。
自分のイメージを一気に崩すような危ない役なのだが、それゆえ挑んでみる意義があると思えた。
こういうときのペ・ヨンジュンは、優等生的な印象とはガラリと変わる。誰もが驚くほど大胆だった。
けれど、周囲の意見は否定的だった。
ペ・ヨンジュンが意欲を見せれば見せるほど、反対意見も強くなった。それは、興行面での心配が大きかったからだ。
それまでの韓国では、映画の時代劇は当たらないと見なされていた。テレビの時代劇は高い視聴率を獲得できるのに、映画の場合はまるで違った。実際、興行で成功した映画の時代劇は皆無だった。
しかも、イ・ジェヨン監督は、作品性に凝るあまり「客を呼べない監督」という見方をされていた。
周囲にしてみれば、ペ・ヨンジュンの記念すべき映画主演第1作目が興行的に不入りになることを極度に心配したのである。
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