再び家族と同居
兄のチャニョクを演じたのは、韓国の国民俳優とも呼べるチェ・スジョンだった。高い人気を誇る俳優との共演で、ペ・ヨンジュンも「多くのことを学びたい」と喜んだ。
気合が入っていただけに、やはりいつものように頑張りすぎて、ペ・ヨンジュンはアッというまに体重が減って、げっそりしてしまった。せっかくタフガイのイメージを作ったのに、それも台なしになった。
無理はなかった。演技をすればするほど、「なんでもっとうまくできないんだ」と悩むばかりだった。65・8%という韓国ドラマ史上最高の視聴率をあげた「初恋」は、ペ・ヨンジュンに多くの試練を与えたドラマでもあった。
何よりも、イメージを変えようとすれば、相応の演技力を求められる。その点でペ・ヨンジュンにはまだ確固たる自信がなかった。
彼は『初恋』に全精力を傾けるために、生活環境を変えようと決意した。それが家族との同居だった。
デビュー当時こそ家族と一緒に暮らしていたペ・ヨンジュンだが、人気者になってからは撮影に便利なように立地条件のいい場所で独り暮らしを続けていた。しかし、独り暮らしは食事の面で不便が多かった。
自宅に戻る決心をしたのは、やはり母の手料理が食べたくなったからだ。
『初恋』の撮影後にスタッフや共演陣と宴会をしてかなり酒を飲んだあと、翌日起きたときに、母の手作りスープが懐かしくて仕方がなかった。
「これで余計なことに神経を使う必要がなくなりました。撮影に集中できます」
ペ・ヨンジュンはそう語って、長期間にわたる『初恋』の撮影に向けて万全の環境を整えた。
(次回に続く)
文=康 熙奉(カン ヒボン)