第21回 お客様は神様ではありません
日本の接客は快感
韓国から日本に来た人が、どこで快感に酔いしれるのか。
ある韓国人女性の話。
「銀座に行って三越に入ります。買い物をするでしょ。接客がすばらしいので、自尊心をくすぐられるんですよ。買ったものを手提げ袋に入れて渡してくれたあとも、腰を直角に折って礼を言ってくれます。そこまではわかるんですが、私が帰ろうとして何歩も遠ざかって、ふと振り向くと、こちらを向いてまだ頭を下げているんです。考えられますか。もう私は帰った人間なんですよ。それなのに、いつまでも頭を下げています。それを見た瞬間、背中がゾクゾクするほどの快感があります。『あ~、日本に来て良かった』って心から思えるんですよ」
この話を聞いて、すぐに納得できた。
私(康熙奉〔カン・ヒボン〕)自身も韓国のデパートの接客ぶりをよく知っているからである。
たとえば、「ロッテ」でも「現代」でも、名が通ったデパートに行ってみる。服を選んでいると、女性店員が寄ってくるが、もう客を値踏みしている雰囲気が表情からありありとわかるのである。(ページ2に続く)