おいしい健康食がズラリ
その他の特選料理を見てみよう。
生きた鯉と幼い鶏で作る最高の保養食と言われたのが「ヨンボンタン(龍鳳湯) 」。スタミナ料理としても有名で、これを食べると90歳の老人も子を得るという説もあった。にわかに信じがたいが……。
また、「いちじくの花袋」も宮廷料理の定番だった。いちじくの実は民間医療薬として朝鮮王朝時代の医学書『東医宝鑑』でも貴重とされていた。血圧降下、健胃、滋養、便秘解消、活力回復に効果があるということだ。
また、中国の医学書『本草綱目』には腸の作用を円滑にし、咽喉の痛みを治すとも書かれていて、消炎用にも使われた。ここまで評価されているいちじくの実を他の野菜と混ぜてマンドゥ(餃子)にするのが「いちじくの花袋」。その姿が花のように美しくて花袋という名が付けられた。
今でも高価なカニも、よくスラサンに上がった。料理の名は「ケチム」。カニの煮物という意味だ。カニは脂肪が少なく蛋白質が多い。特に必須アミノ酸がたっぷり含有されていて成長期の子供によいとされた。世継ぎ候補にはさぞかしケチムがいつも用意されていたことだろう。
また、カニは肥満、高血圧、心臓病などの予防に効果があるとされ、さらに、精神エネルギーを充満させる食材として宮廷で本当に重宝された。
けれど、庶民の口にはめったに入らなかった。
それは現在も同じである。
文=「ロコレ」編集部