孤独な反抗児
チェ・ミンスは撮影現場での集中力が凄まじい。自分の習慣や生活までその役柄に没入させて、模倣の次元を超越して1人の人物に完全になりきってしまう。そういう意味では、「天性の俳優」と言うことができるだろう。
ただ、あまりにも役柄の性格にのめり込んでいるせいか、時々彼の言葉からは観念的な事象が言及されることが多い。
たとえば、あるときマスコミがチェ・ミンスにインタビューを試みたことがあったが、そのとき彼は「自転車のペダルの牧歌的な意味」や「私の空間的なページ」など、日常では使われない抽象的な言葉を羅列したという。
その言葉が気になって記者はさらに聞いてみた。
・・なぜ、それだけ孤独なのですか、と。
そのとき、チェ・ミンスは次のように答えた。
「落ちてくる水滴を見ていると、それが雨ではなく宝石に見えるから孤独なのです」
この言葉から感じられるように、彼は日常生活の中でも俳優だった。彼は1日24時間ずっとスターなのである。
ただし、一つのイメージが定着していたことも事実だった。肩に力を入れたり目を大きく開いたりする態度からは、強い男性の匂いが感じられたものの、男らしさに対する過度な執着は自意識過剰と非難されることもあった。
チェ・ミンスは「タフガイ」であると同時に「孤独な反抗児」を演じていたのだ。
しかし、そんな固定観念を払拭するかのように、2004年に出演したドラマ『漢江水打令』では、柔らかい男性を好演した。ソフトなイメージで視聴者からも大きな反響を得た。たちまち人気ドラマとなり、インターネット上でも彼を高く評価する意見が後を絶たなかった。(ページ3に続く)