第3回「死罪の方法もこんなに違う」
賜薬とは何か
江戸時代、士農工商の最上位にいた武士が死罪を命じられたとき、名誉ある死に方は切腹だった。
腹を切り刻むわけなので、とてもむごいことなのだが、それが武士にとっては誇りを保てる死に方だった。
一方の朝鮮王朝。高貴なお方が死罪を命じられたときは毒薬を仰いで絶命するのが名誉ある死に方だった。
毒薬は国王が賜る形を取るので、その死罪のことは「賜薬(サヤク)」と呼ばれた。毒薬の中身は砒素とトリカブトだった。
韓国時代劇を見ていると、毒薬を呑んだ高貴なお方がアッという間に息絶えるが、実際にそんな即効性はなかった。
呑んだ人は5時間くらい苦しんでから死ぬのが当たり前で、中には一晩中も悶々と苦しんだ人もいたという。確かに、名誉ある死に方なのだが、肉体的にも精神的にもむごい方法だったのである。
朝鮮王朝ではなぜ高貴なお方は毒を仰いで死んだのか。(ページ2に続く)