ソウルの盛り場は楽しい!

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賑やかな街が好きで、東京でもあえて騒々しいところを選んで出掛けている。そんな物好きな私(康熙奉〔カン・ヒボン〕)が過去を振り返って、「一番うるさい街だった」と断言するのがソウルの東大門(トンデムン)市場だ。

騒がしい街でショッピングを楽しむ人たち(写真はイメージです)




飲食店での持ち込み

まさに、耳をふさぎたくなるような街だ。
東大門市場……。
ここでは、大音響の音楽が四六時中やむことがない。まるで馬鹿げた大声コンテストのように、ビルというビルからアップテンポの音が鳴り響き、マイクを握った買い物アジテーターは絶叫しながら店の誇大宣伝を繰り返している。
その騒音に拍車をかけるかのように、通りを埋める車から連鎖的にけたたましいクラクションが起こる。
これほど騒がしい街が世界のどこにあるというのか。革命でもなく取次ぎ騒ぎでもないのに、街はこれほど喧騒に包まれている。ここに比べれば、花見の席でのカラオケなんか、かわいいものだろう。
私はしばし耳を休ませようとして、静かな喫茶店を探した。しかし、適当な店が見つからず、ロッテリアに入った。




だが、ここもやはり典型的な韓国だった。
耳をつんざくようなポップスが流れ、日本のロッテリアとはBGMの音響量が3倍ほど違った。
やれやれ。
うるさい店に入ったことを後悔したが、そんな思いも意外とあっさり消えた。興味深い場面を見ることができたからだ。
私のとなりの席には3人の20代の女性がいたが、店内で飲み物を注文したのは1人だけで、あとの2人は外から飲み物とパンを持ち込み堂々と飲食をしていた。
「店の人にとがめられたらどうしよう?」
日本でならそういうことを心配しがちだが、そんな用心深さなど3人には微塵もなかった。
「1人だけ店で頼めばそれで十分でしょ」
そんな感じなのだ。
よく見渡してみると、他にも、飲食物を持ち込んでいる客が何人もいる。明らかに客は客としてわがままにふるまい、店もいちいち細かいことに口出しをしない……店内はそんな雰囲気だ。




他の記憶も甦る。
韓国で一番大きな書店といえば、真っ先に思い浮かぶのが、光化門(クァンファムン)の近くの教保文庫だ。この書店によく行っているときに目にしたのは、学習参考書を熱心に見るために店内で座り込んでいる学生の多さだった。
「立ち読み」でなくて「座り込み読み」。しかも、あまりに多くの若者が露骨に座り込んでいるので、完全に通路がふさがれている。
日本の書店では、絶対にお目にかかれない光景だ。
「客にやりたいようにさせるのが韓国のお店の流儀?」
しみじみと、そう思った。
店はおおらかで客も大満足……失われてほしくない韓国がそこにある。

文=康 熙奉(カン ヒボン)

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