韓国での接客について

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韓国から日本に来た人たちに話を聞くことが多い。「日本に来て何に感心していますか?」と質問すると、「街がきれい」「食べ物が美味しい」と並んで「お店での対応が親切」という答えが多い。確かに、接客では韓国と日本は違う。




目が笑っていない店員さん

ある韓国人女性の話。
「銀座に行って三越に入ります。買い物をするでしょ。接客がすばらしいので、自尊心をくすぐられるんですよ。買ったものを手提げ袋に入れて渡してくれたあとも、腰を直角に折って礼を言ってくれます。そこまではわかるんですが、私が帰ろうとして何歩も遠ざかって、ふと振り向くと、こちらを向いてまだ頭を下げているんです。考えられますか?もう私は帰った人間なんですよ。それなのに、いつまでも頭を下げています。それを見た瞬間、背中がゾクゾクするほどの快感があります。『あ~、日本に来て良かった』って心から思えるんですよ」
この話を聞いて、すぐに納得できた。
私(康熙奉〔カン・ヒボン〕)自身も韓国のデパートの接客ぶりをよく知っているからである。
たとえば、「ロッテ」でも「現代」でも、名が通ったデパートに行ってみる。服を選んでいると、女性店員が寄ってくるが、もう客を値踏みしている雰囲気が表情からありありとわかる。




言葉使いはていねいだが、目がまったく笑っていない。「お客様は神様です」と思っていないどころか、「このお客は何者?」という表情が垣間見えてしまう。
一応、表面的には丁寧なのだが、店員さんには心が伴っていないように見える。
しかし、彼女たちに責任があるとは思えない。韓国の女性はもともと接客に向いていないところがある。たとえ仕事とはいえ、見ず知らずの人に底抜けの笑顔で対応することに慣れていない。これは、韓国社会に色濃く残っている儒教的な価値観が関係している。女性が気安く男性に笑顔を見せることは歴史的に戒められてきたのだ。
その影響が現在にも残っている。たとえ、接客業であろうとも……。
また、デパートの他に接客がいい場所として思い浮かぶのは、飛行機の中である。特に、キャビンアテンダントは接客のプロと言われている。
ただし、韓国の場合はあっさりと先入観をくつがえしてくれる。
韓国の飛行機に乗ったときのこと……缶ビールのお代わりを注文したら、きつい調子で言われてしまった。
「3つ目ですよ。これで終わりです!」




さすがに私も3つ目で終わりにしようと思っていた。しかし、あからさまに言われてしまうと、立つ瀬がない。酔いがいっぺんにさめてしまった。
別のあるとき、キャビンアテンダントが持っていたポットをうっかり傾けてしまい、座席にいた私の脚にかなりのお湯がかかった。
「ヒャー」
あまりに熱くて悲鳴をあげてしまった。
ただし、お湯を乗客にかけた当人はボーッと突っ立っているだけ。
「それほど熱かったかしら?」
そんな表情に見えた。
私の大げさな反応を見抜くところはさすがだが……。
一事が万事なのである。
韓国の航空会社のキャビンアテンダントはプライドが相当に高いようで、「私は乗客より上」と思っているフシがある。当たっているかもしれないが、それを表情や口調に出してはいけない。




意外なこともあった。大韓航空の飛行機に乗ったのに、やたらと愛想がいいキャビンアテンダントがいたのだ。
目が素直に笑っている。客の値踏みもしていない。
「彼女は韓国の女性ではないな」
そう思って名札を見たら日本名だった。
「なるほど」
大いに納得した次第だ

文=康 熙奉(カン ヒボン)

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