『トッケビ』が描いた本質とは?

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脚本家のキム・ウンスク作家は、『シークレット・ガーデン』や『太陽の末裔』を書いた大物だ。発想の豊かさに定評があるが、彼女は不思議な世界の住人を通して人間の生死を根源的に見つめるドラマを書いた。それが『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』だ。

写真=tvN公式サイトより




トッケビの花嫁

ドラマの中で、コン・ユが扮するキム・シンは900年以上も前の武将なのに、国王に裏切られて、胸に剣が刺さったまま今もさまよっている。
その剣があまりに生々しい……というより、恐ろしい。
ただし、実際にその剣が見える人はほとんどいない。わずかに、「トッケビの花嫁」と呼ばれる女性だけが剣が見える。
それゆえ、キム・シンは「トッケビの花嫁」を見つけて、剣を抜いてもらわなければならない。
そうすれば、彼はようやく往生することができて、苦しみから解放される。
果たして、「トッケビの花嫁」はどこにいる?
東西を駆けめぐりながら探していたキム・シンの前に現れたのが、キム・ゴウンが扮したウンタクだった。
彼女には幽霊が見えていた。
同じく、剣までも……。




こんな不思議な世界を奔放に旅する快感を味わわせてくれるのが『トッケビ』というドラマの真髄だ。
このドラマは同時に、人間の輪廻転生も描いている。
それは、キム・シンが語るこんなセリフに現れている。
「人間は生まれ変わって四度の人生を経験する……一度目は種を植え、二度目は水をやり、三度目に収穫して、四度目に食べる」
この言葉は視聴者に不思議な暗示をかける。
一体、自分は何度目の人生を歩んでいるのだろうか、と。
「自分は何度目の人生を歩んでいる?」と自問自答していると、やたらと気になるのが、イ・ドンウクが演じる死神の存在だ。
この死神は、死にゆく人を天界に導く役割を持っているが、深刻な様子はまったくなく、道で出会った女性に一目惚れするような人間くさい一面を持っている。
そんな死神がキム・シンと同居することで、物語は重層的な展開を見せていく。
韓国人の死生観は歴史的に「人が死ねば魂は空に上がり、肉体は地に還(かえ)る」というものだった。そして、その魂はときおり地上に戻ってくるので、子孫は祭祀を行なって先祖を迎えた。




このように、たとえ死んでも魂は不滅なのである。
そうした死生観を巧みなストーリーと美しい映像で描いたのが、ドラマ『トッケビ』の本質だった。
韓国で絶大な人気を集めたのも、相応の理由があったのである。

文=康 熙奉(カン ヒボン)

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