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韓国・南西岸への旅9「青山島に行くフェリー」

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韓国もさすがである。ウナギ鍋という発想に拍手だ。ウナギの身が柔らかくなりすぎて、鍋の中でしだいにグチャグチャになってしまうことを嫌がる人もいるかもしれないが、煮るほどに味がしみてまろやかになるのは確かだった。

フェリーに乗船していく




広い海のかなた

食事が終わってから、窓際の席から漠然と外を見ていると、続々と旅行客が旅客ターミナルに入っていく。時計を見ると、午後2時10分だった。
20分後には青山島(チョンサンド)行きの船が出る。あわてて会計をすませて乗船券売り場に行くと、土曜日の午後だったこともあり、長蛇の列ができていた。
春の青山島は菜の花が真っ盛り。それを目当てに大勢の観光客が訪ねている様子だった。
<小さな島に行く船だから、それほど大きくはないだろう。定員オーバーで乗れなくなったら……>
長い列に並びながら、私は気が気でなかったが、出航の3分前になってようやく乗船券を買えた。
ハラハラさせられて最後にうまくまとまると、本当に得した気分になる。青山島では、何かいいことがありそうな予感がした。




案の定、青山島行きの船は小さなフェリーだった。済州島(チェジュド)から乗ってきたフェリーと比べたら、マグロとイワシほどの違いがあった。それでも、甲板の中央には大きな部屋があって、その座敷で大勢の乗客がそれぞれにくつろいでいた。
その中にポツンと座りながら、どんな人たちがいるのかを見ていた。高校生が圧倒的に多い。他には、女性グループの旅行客、若い男女のカップルが目につく。グルリと見渡したところ、一人で所在なさそうにしているのは私だけだった。
高校生たちの多くは、本を開いて勉強していた。
こんな船の中でも熱心に勉強するとは感心である。時間帯からいっても、莞島(ワンド)の高校に通っている青山島の少年や少女だろう。島に生まれたことを悔やむことなく、自分の未来を明るく築いていってほしい……なんて、私はいつから島の長老になったのか。
風に吹かれたくなり、部屋を出て船尾のデッキに立った。
広い海のかなたに、小さな島影がいくつも重なって見えている。その一つひとつに人間の暮らしがある。

文・写真=康 熙奉(カン・ヒボン)

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