傑作『赤い袖先』は、メインのストーリーの他に、もう一つの重要な視点を持っていた。それは何かと言うと、王宮で奉職する女官たちの人生が克明に描かれていたことだ。特に、年齢を重ねていった女官の生きざまについても説得力がある描き方をしていた。
女官を描いた重厚な歴史ドラマ
今まで、韓国時代劇では王宮で働く女官が数限りなく登場しているが、『赤い袖先』ほどリアルな生き方が描写されたドラマは記憶にない。
そういう意味で、このドラマは「国王と宮女の禁じられた情愛」を題材にしていると同時に、イ・セヨンが演じたソン・ドギムを中心にして、王宮が成立するための必須人物である女官に優しい視点を注いでいた。
当時(1760~1783年ごろ)、王宮には約700人の女官が奉職していた。
彼女たちは原則的には「国王と結婚した女性」と見なされていた。それゆえ、他の男性との恋愛は厳禁であり、もし妊娠する事態になれば、「国王に対して不貞を犯した大罪」を問われて処刑が免れなかった。
そこまで厳しく自分を律して王宮で働きながら、病気になったり高齢になったりすると、なんの保障もなく王宮を出されてしまう。
そういう「哀しい境遇」というものを女官たちは抱えていた。
そのあたりを『赤い袖先』はストーリーの中に巧みに取り組んで、重厚な歴史ドラマを作っていた。
このように「女官実録物語」という側面を持ったドラマであることも、『赤い袖先』が史実に則した作品として高く評価された理由である。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)