たとえば韓国に旅行で行って「とても親切な人に助けられた」という経験を持った人はとても多いに違いない。今回は、たまたま釜山で出会った忘れられないハラボジの話をしてみましょう。
現れたハラボジ
釜山(プサン)に行って地下鉄の切符を買おうとしたときのことだ。
目の前の自販機は1万ウォン札(約1000円)が使えないものだったのだが、あいにく1万ウォン札しか持っていなかった。
両替機がないかとキョロキョロしていたら、「ワシの出番だ。まかせとけ」といった雰囲気で70歳くらいのハラボジ(おじいさん)が近づいてきた。
「日本から来たのか。そうか、そうか。釜山でたっぷりお金を使っていってね」
ハラボジは観光客誘致に人生を捧げているような感じで、日本語で切符の買い方を一から説明し始めた。
ハラボジの好意を無にしたくなくて、そのまま黙って説明を聞いた。まるで5歳の子供に切符を買わせるように、ハラボジの説明は細かかった。
ひと通り説明を聞いたあと、私は1万ウォン札を見せて「両替機はないか」と聞いた。すると、ハラボジはズラリと並んだ自販機の左側を指した。
そこで、ハラボジに礼を言い、一番左側まで行った。
そこの機械には先客がいたので、その人が終わるのを待ってから、1万ウォン札を挿入した。
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