哀れな明宗
文定王后をトップにして、その下に就いたのが尹元衡と鄭蘭貞。この3人が「悪のトライアングル」を構成した。
ちなみに、文定王后はとことん政治を腐敗させた末に1665年に絶命した。
この死で命運を断たれたのが尹元衡と鄭蘭貞だ。この夫婦は強力な後ろ楯を失って恐怖にかられ、王宮から逃げ出した。大きく怨みを買っていたのを自覚していたのだ。
結局は、2人は逃げきれないと覚悟して自害した。その最期は「悪は滅びる」の典型となった。
こうした3悪人の被害をもろに受けたのが明宗だ。
彼はせっかく王になったのに、実母と叔父夫婦の悪事を見ているだけしかできなかった。そのことでどれほど心痛がひどかったか。
ようやく3人は明宗の前から姿を消したが、彼が受けた心の傷は癒えることがなかった。結局、明宗は文定王后の死後2年で寿命が尽きた。母の悪事が心やさしき国王の命を奪ったと言っても過言ではない。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
康 熙奉(カン ヒボン)
1954年東京生まれ。在日韓国人二世。韓国の歴史・文化と、韓流および日韓関係を描いた著作が多い。特に、朝鮮王朝の読み物シリーズはベストセラーとなった。主な著書は、『知れば知るほど面白い朝鮮王朝の歴史と人物』『朝鮮王朝の歴史はなぜこんなに面白いのか』『日本のコリアをゆく』『徳川幕府はなぜ朝鮮王朝と蜜月を築けたのか』『悪女たちの朝鮮王朝』『宿命の日韓二千年史』『韓流スターと兵役』など。最新刊は『いまの韓国時代劇を楽しむための朝鮮王朝の人物と歴史』。
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